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不動産投資クラウドファンディングという仕組みを目にすることが増えましたが、どんなものなのでしょうか。

お付き合いのある不動産業者さんがサービスを始めたというので話を聞いてみました。

結論として、不動産投資の入門編としては良いかと思います。利回りが定期預金より良いので、手頃な感覚で利用することが出来ます。

しかしよくよく調べてみると、様々な商品があり注意が必要です。宣伝文句もリスクを無視していたり、都合が良かったり、そういった点では実際の不動産投資同様に知識無しで始めるのは危ない商品だなとも感じました。

今回、不動産業者の営業マンに話を聞いて、疑問点なども全て解消してきたので、仕組みがよくわかりました。

細かく仕組みを理解しようとすると複雑なのですが、なるべく簡単に解説してみたいと思います。

また、どういったメリットとデメリットがあるかご紹介したいと思います。

このコラムで分かること

 

1.不動産投資クラウドファンディングとは

 ・優先、劣後出資者の仕組み

 ・不動産投資との違い

 ・不動産投資信託(リート)との違い

2.不動産投資クラウドファンディングのメリットデメリット

 ・メリット

 ・デメリット

3.不動産投資クラウドファンディングを選ぶ際の注意点

4.まとめ

 

1.不動産投資クラウドファンディングとは

インターネットを通じて多くの投資家から資金を集め、集めた資金をもとに不動産運用を行い運用益や売買差益を投資家に分配する仕組みとなっています。

手続きは簡単で、ネット上で登録して出資するだけで始めることが出来ます。

わずかな資金で不動産投資を始めることが出来て、安定的な不動産収入からの利益を分配するため、不動産投資の入門編として始めるというのも良いかも知れません。

独特の制度として、「優先・劣後出資者」というものがあります。

これは文字通りなのですが、要は出資者を守る仕組みがあるということです。

一般の出資者が優先出資者となり、業者が劣後出資者となるのですが、ファンドにおいて価値の減少など何か損失が出た場合劣後出資者は先にリスクを背負うことになります。

1.1 優先・劣後出資者という仕組み

「優先・劣後出資者」とはどういうことかご説明します。

【Aファンドの条件】

物件に対する出資割合:優先出資者80% / 劣後出資者20%】

物件価格:2,000万円

    (持ち分:優先出資者1,600万円/劣後出資者400万円)

家賃収入(諸経費控除後):月々8万円(年間96万円)

物件利回り:4.8%

不動産投資クラウドファンディング条件:

            一口100万円 期間1年間 利回り3%

運用結果:出資者は一年後に元本の100万円と、利回り3%から税引き後

     の2.5万円弱が返ってくる。

     劣後出資者の業者は運用残の48万円の収益

【事例1:3ヶ月間空室が出た場合】

家賃収入:72万円(24万円の損失)

物件価格:2000万円(売却せず変動無しとする)

劣後出資者が負担する損失:400万円まで⇒24万円の損失は劣後出資者が背負う

※収益も優先出資者へ配当後に残額があった場合のみ劣後出資者に配当される 

運用結果:優先出資者は一年後に元本の100万円と利回り3%から税引き後の

     2.5万円弱が返ってくる⇒損失の影響なし

     劣後出資者の業者は24万円の収益⇒24万円の損失

 

【事例2:半年後に不動産を2割減で売却した事により損失が出た場合】

家賃収入:48万円(8万円×6ヶ月)

物件売却額:1600万円(400万円の評価減)

劣後出資者が負担する損失:400万円まで

運用結果:優先出資者は一年後に元本の100万円と利回り3%から税引き後の

     2.5万円弱が返ってくる⇒損失の影響なし

     劣後出資者の業者が全ての損失を被る

このように、一般の出資者が優先して利益も配当され、元金の保護を受けることによって、安全生を高める仕組みとなっております。この点は他の資産運用では見られない画期的なシステムだなと感じましたし、面白いなと感じました。

1.2 不動産投資との違い

不動産投資クラウドファンディングには組合型匿名型がありますが、組合型は物件を共有することになり、通常の不動産投資に近くなります。その分、手続きなど不自由になりますし、出資金額も高額となる傾向があります。

一般的な不動産投資クラウドファンディングは匿名型になります。投資する対象が不動産の特定の物件であり、物件情報を確認したり選定できるという面白さがあります。

ローンを組むわけではないので、手続き面でも簡略化されており、手数料もかからない商品が多くなっています。

ただ、もし仮に募集されていた口数全部を1人で独占して出資したとしても所有者になれませんし、物件についての権限を有することも出来ません。

金融商品の定期預金国債のような感覚で不動産投資を始めることが出来ますが、元本保証も対象不動産の所有権もないため、出資額を全て失う可能性があります

1.3 不動産投資信託(リート)との違い

不動産投資信託は、自ら物件を選ぶことが出来ません

運用会社により既にパック商品となっておりますので、市場の動向により基準価格も上下します。不動産の安定収入という部分を実感する商品設計とは言えず、投資先の国の不動産の動向、景気や経済成長の予想や期待値に連動した値動きをします

購入も一口単位では無く、1000円以上とか証券会社によって決まっていますが、最低額以上は自由に金額を指定して購入することが出来ます。そして、不動産投資クラウドファンディングと違って、途中解約しても不利益は無く、現金化を自由にすることが出来ます。

不動産投資クラウドファンディング途中解約が出来ない商品や、所定の手数料が必要だったり、返金手続きに時間がかかったりする場合がありますので、注意が必要です。

まとめると毎日の基準価格変動のありなしと、運用や評価損の場合に劣後して負担する仕組みのありなしが大きな違いです。

不動産投資クラウドファンディングは特定の物件と特定の運営業者によるサービスなので、リスクは不動産投資信託よりも高いと評価せざるを得ないでしょう。

2.不動産投資クラウドファンディングのメリットデメリット

メリット

・少額から始めることが出来る(1万円以上)

・登録だけなど手続きが楽で簡単に始めることが出来る

・優先劣後出資者の仕組みがあり、損失が発生しにくい

・定期預金より高利回りである

・投資物件を自ら選ぶことが出来る

・ローンを組まなくても良い

・不動産という安定した収益からの配当を受けられる

・年に数回利回り配当がある場合がある

デメリット

・出資金の元手が必要(一口100万円など)

・元本保証が無い

・様々な商品があり、分かりにくい商品もある

・満期まで解約できない場合や所定の手数料がかかる場合がある

・業者の見極めや、物件の見極めが難しい

・情報を精査する能力も必要で、知識なく始めてしまうと危険な出資をしてしまう可能性がある

・出資先の物件の相場や利回りが適正か判断出来ない

・人気商品は抽選になる場合もある

3.不動産投資クラウドファンディングを選ぶ際の注意点

何社か不動産投資クラウドファンディングの業者のページを見てみましたが、一口1万~100万と幅広く、決して僅かな金額ではないかなと思いました。

アパートで不動産投資をする場合と比較して、100万円と手頃な金額で不動産投資を始められるというような表現をしていたり、知識なしで始めると危ないサービスであるなと感じました。

CMで知名度もある「みんなで〇〇さん」については、中高年に人気で好調のようですが、調べてみるとハイリスクハイリターンな設計になっていると思いました。

出資先が自社グループであったり、出資金の設定が100万円以上で長期間運用など、ちょっと私の失敗しない資産運用方針には組み込めないなと感じました。

100万円が5年間で135万円になるという点や、年に6回の利回り配当というのは魅力かも知れませんが、ほぼ自社案件で回しているという点はリスクを一気に背負い込む恐れがあります

選ぶ際の注意点

・物件の選定が良いか(数字に無理が無いか、数字が正しいか)

・利回りが適正か(高い場合はリスクがあるという点をお忘れ無く、値上がり売却や未定の開発計画を前提しているような商品もある)

・業者が信頼できるか(知名度だけでは無く、業者の規模や経営状況も注意)

・運用期間は適正なのか(元本保証がない分、長期運用はリスクあり)

・劣後出資者の割合が適正か(5%のみの設定という商品もあり)

・元本保証が無いという高リスク商品であることを忘れがち

 (安心安全実績と業者サイトには書いてありますが・・・)

4.まとめ

不動産投資クラウドファンディングという新しい商品ですが、様々な商品が出ており、一括りに良い悪いを判断できる物ではございません

簡単に始めることが出来て分かり易い設計に見えますが、リスクは低くなく、やはり投資商品であるという認識をした方が良いでしょう。

業者の説明を鵜呑みにせず、情報を整理する能力が求められるという点では、ワンルームマンション投資や実物の不動産投資と同じです。

手軽なようですが、難しい物件も多くあり、実は投資経験者向けのサービスと言えるでしょう。安易に手を出さないことをお勧め致します

注意点を見ると、普通の不動産投資と同じような部分もあります。結局、失敗しないために必要なことはしなければなりません。

そういう意味では、不動産投資の入門編としての活用は出来るかもしれませんが、高額出資する際は、実際の不動産投資よりハイリスクになる可能性もございます。

よく調べることと、販売員以外で不動産投資のプロに相談することをお勧め致します。