FPジャーナルという日本ファイナンシャルプランナー協会の会報がございます。

毎月有益な情報が載っておりとても勉強になるのですが、事例研究のコーナーで我々のマンション投資アナリストの仲間である齋藤岳志さんの事例が掲載されておりました。

残念ながら、一般の方が我々のようなプロのプランナーを利用する環境はまだまだ不十分で、どうしても業者の発信力・営業力・認知力には敵わないのが現状です。

この事例で少しでも辛い思いをする方が減るようにと思い、記事に致します。

マンション投資失敗事例

事例としては、「老後の支えと思って新築の投資用ワンルームマンションを購入したが毎月赤字ですぐに売りたい」という内容でした。

不動産会社の営業担当者に勧められサブリース方式で購入したが、毎月約3万円の赤字になると分かり購入後返済開始前に相談があったということです。

夢心地で購入した後に、現実に気がついて怖くなってしまうのは一番良くないパターンではありますが、何とも残念な事例ですよね・・・。

このケースでは不動産投資として目的を達成するために不利な点が沢山ありました。以下のような点です。

①新築ワンルームマンションであったこと

②サブリース方式であったこと

③年齢が53歳であったこと

④頭金がなかったこと

⑤預貯金がすくなかったこと

以上のような状況でした。

不動産投資する際の注意点

不動産投資は基本的にすぐに儲かるような物でもないのです。地味なんです。

でも、未だに土地バブル的な発想で不動産投資を考える人が大半なのです。

価格高騰前に仕込むのであればまだしも、富裕層でも無い方が知識も経験も無い中ですることはやめておいた方が無難です。

不動産投資は長期での安定した収入源になるのですが、そのためにはリスクコントロール、計画性、事前準備、状況を把握する事が必須であります。

先程の事例で不利な点を少しずつ解説致します。

①新築ワンルームマンションであったこと

広告宣伝費や営業利益も購入価格に含まれてるため、価格が高くなります。毎月収支でプラスになることはかなり困難です。また、近年の土地・建築資材価格の上昇などの影響もございます。

②サブリース方式であったこと

空室の心配はございませんが、受け取れる賃料が本来賃料の9割程度になります。基本的に新築物件には不要です。空室を心配しなきゃいけないような立地にマンションがあるのであれば、そもそも購入してはいけない物件です。

そしてサブリース賃料は不変ではございません。下がります。サブリース方式というのは売却時にも厄介です。後ほど触れます。

③年齢が53歳であったこと

不動産投資においても、住宅ローンでお馴染みの団体信用生命保険に加入が出来るのです。完済時に80歳が限度であるため、新築であるのに26年のローンになってしまっています。新築物件であれば35年のローン、長いところだと45年ローンが組めたりします。

因みに35年ローンにするだけで月々の収支は2万円改善します。

④頭金がなかったこと

借入額が多くなると、単純に月々のローン返済が多くなります。家計の収支や全体とのバランスですが、そういったことを検討した形跡がなく、「10万円で老後の不安を解消できますよ」という売り文句に飛びついているケースかと思います。

不動産屋や素敵な物件に飛びつく前に、プランニングをしっかりとしておく必要があります。不動産は一生、次世代にも渡せる宝となる物ですが、時間もかかりますし、保険の見直しも含めてしっかりと検討が必要です。

また、頭金が用意出来なくても将来的に繰り上げ返済などをして月々の返済額を減らす事は視野に入れておかなければ成りません。家賃も下落しますし、月々の修繕積立金や管理費も値上げされる可能性がございます。

⑤預貯金がすくなかったこと

この事例では預貯金が100万円しかないという事例でした。これでは3ヶ月か半年分の生活費しかなさそうなので、投資をする上では心許ないですね。

不動産投資は様々な種類がありますが、サラリーマンに最適で楽でやることのないワンルームマンション投資であっても、ある程度の支出の可能性は考慮しておかなければ成りません。

長期投資においては支出も当然発生してきます。それが資産を持って誰かから収益を得るということです。ただし、新築物件の場合、設備が故障することは10年ほど無いので、退去に伴う原状回復費用等はそこまで高額になることはございません。

事例の解決策

考えられる解決策は3つです。

①売却する

マイナス収支は解消できますが、ローンが残る可能性がある

②繰り上げ返済(返済額短縮型)

ある程度の原資が必要となります。繰り上げ返済手数料は無料の所もありますが、50万円以上など決まっているところがほとんどです。

③別の物件を購入する

私のクライアントの事例の解決策でも採用しましたが、収支を改善できる可能性があります。暫く保有することで売却時にローンが残らなくなる可能性や、先に収益化出来る可能性があるので、保有や売却によって他の損失を補填できます。

ただし、誰もがローン借入枠がありますので、低収入の方であると難しい場合がございます。

この事例では①としたそうです。なら、そもそも購入しなければ良いじゃん・・・って出来ないのが不動産営業マンの凄さでしょうか。

事例の続き(結果)

投資用マンションを売却する場合、収益還元法により決定される場合が多くあります。要は賃料から経費(管理費・修繕費)を引いて年間利益を出して還元利回りで割るという方法です。

その方法によると、2,510万円で購入した物件なのですが、サブリース付き物件であるため、家賃は81,500円でした。売却するに当たって収益還元法(利回り4.5%)で計算すると、1,863万円になります。しかし、本来の家賃である92,500円で計算すると2,156万円になります。

この事例では、2年後に副業で資金を用意し、サブリースを外す交渉を弁護士に依頼し、2,150万円で売却できたとのことでした。総額にすると400万円程のマイナスで解決ということですが、投資としては大失敗と言える事例です。勉強代にしても高すぎる代金です。

最も致命的だったのは、都内駅近のワンルームマンションにおいて不要なサブリースを付けた契約書にサインしてしまったことです。賃料収入が11,000円も低くなり、売却時においてもサブリース解除費用を家賃の6ヶ月分支払う必要がありました。

それは契約書に明記されている場合がほとんどなので、弁護士費用20万円は本来不要なのですが、自分の資産運用を任せて2,500万円の買い物をした営業担当者に直接言えない・交渉できないということでした・・・。不思議な感じですが、買うまではお客さんで買った後に主張するとクレーマーになるのです。気をつけてください。

事例まとめ

今回の事例は、売主と買い主どちらにも残念で不十分なところはありましたが、物件が悪かったのでしょうか?

実は悪くない物件という印象を受けました。

新築サブリース付きで月々マイナス3万円弱ということでしたが、月々プラスマイナス0になる物件のポテンシャルがあるように感じました。

これまで記載したとおり、ローンが26年であったため、本来の35年であれば収支が2万円改善します。そして、サブリースを外すと本来の家賃が1.1万円上がるからです。40代で資産形成を始めたい方にとってはそこまで悪くはない物件です。

ただし、新築で2,500万円程ということは、首都圏といえども横浜の近郊などかも知れないので、将来的な家賃下落や修繕積立金の増額を含めて10年目以降はマイナス1万円は見込んでいた方が良さそうです。そういった数字は実際の家賃相場や現在状況などで投資分析することでプランに組み入れることが出来ます。

まとめ

失敗事例を作っているのは、物件ではなく人なのです。不動産投資が悪いのではなくて、不動産投資を利用する売り手と買い手の認識のずれがあることが不幸な結果を生んだのです。

実際、この事例の方はその後は積立NISAやiDeCoで資産形成をする方にシフトしたそうです。不動産屋はこの先のお客さんに成ってくれる可能性を逃し、不動産投資へのネガティブイメージを拡散し、この方は不動産投資という安定的な資産形成をする術を失ったのです。

双方にとって不幸じゃありませんか?

どのように不動産屋さんと向き合えば良いか?自身で学ぶか、プロの力に頼ることです。契約書にサインする前に、安易に不動産投資を始める前に、是非ご相談ください。